
柿田川
約8,500年前の富士山の大爆発で大量の溶岩を噴出してできたのが三島溶岩流。その三島溶岩流の間を通って、富士山の東斜面に降った雨や雪解け水が約40km離れた清水町の国道1号線の直下から湧き水となって現れる。富士山周辺には同じように水が湧き出ているところがあるが、その中で柿田川の水量が最も多く、「東洋一の湧水」と呼ばれている。市街地の真ん中でこつ然と湧き出した水は、集まって川幅30~50m、延長約1200mの河川となって狩野川と合流する。水が地下から突然湧き出してそのまま河川となっている柿田川は、その流域に豊かな自然環境をつくり、貴重な生態系を維持している。
碑文
若い火山にふさはしく すこやかな線の 裾長き円錐の山よ 孤立した大地の乳房 浄らかな地下水の宝庫 / 大空に蒼く融け入つて ふたたび浮き出る一枚の山よ 息づく富士山 / ぼくは知つてる きみの体の内側の 玄武岩溶岩層の 隙間を縫って ピシャリ ピシャリ 滴り落ちる地下水の ある水脈は 百年以上の歳月ののち 麓のまちに やうやくにして辿りつくのだ / ぼくはその麓のまちに 生ひ出でた者 月見草とミミズの棲む 貧しい庭の掘抜井戸に ぼくはきみを映して飼つた / 練兵場の松林には松の花粉 奈良橋のアスハルトには 憲兵大尉の馬糞の埃 そしてきみはいつの夏も 清冽な水となつて流れた / 小浜池にも 柿田川にも 鮠・丸太・鮎のきらめき きみの流れで泳ぐとき ぼくらのふくらむちんぽこも たちまち縮んで 豆粒のピストルになつた / 唇を紫に染め ぼくらはきみをあがめ得ただけーー ぼくらはいつせいに思つたものさ 富士山の詩や絵なんてもなあ 恥づかしくつて 恥づかしくつて!(大岡信「産卵せよ富士」5より)
所在地:駿東郡清水町