伊豆文学散歩
峰の噴湯

峰の噴湯

大正15年11月22日正午、爆音と共に地上約50mの上空に噴き上げて誕生した。以来80数余年、ひとときも絶えることなく毎分600リットル、100℃の温泉を噴き上げ続けている自噴泉。この大噴泉の栓を定期的に開放し、噴き上げる姿をまじかで見ることができる。

碑文

Mといふのは、もと私達の同人で立川の農事試験場に技師をしてゐた。作家としても知られた人だつたが、国に帰つてからいつしか句作を捨てたらしく、しぜんと疎遠とはなつたが、彼が国でメロンを作つてゐるといふ事はうはさに聞いてゐた。彼の家は今居浜とは十二三丁位しか離れてゐない谷津といふ処なのだ。数年前、谷津に近い峯といふ山の村で、井戸を掘つたところが、水ではなく湯が、それも非常な勢をもつて噴きあがつてきた。一昼夜に何万石といふ噴出量なのだ。で、峰は忽ちに温泉場となつてしまつた。尤も、峰は風景の貧しい処なので、其湯を海岸まで引いて温泉部落を経営した。それが此の今居浜温泉なのである。Mのメロンも、かうした有りあまる温泉を利用して、温泉仕立のメロンの速成をするものだといふことは、聞かずとも想像されるのだつた。(萩原井泉水「メロン作り」より)

所在地:賀茂郡河津町峰