
蓑掛け岩
岬の先端が激しい波浪に浸蝕されて海中に群立したもの。修験者「役の行者」が大島から石廊崎へ飛来中、雨にふられて蓑を干した場所と言われる。
碑文
いまは東京から下田まで、電車で三時間ですが、西海岸の子浦から半島の南端、石廊崎をまわり、下田の港へ行くまでに、同じ時間ほど船に乗った覚えがあります。蓑掛岩を外から見ました。それは手品師が自分のふところから目的物を出して見せるのに似ていました。船がそこにさしかかる前に、父は自分が用意しておいたもののように、ホラ、あれだ、あれが蓑掛岩だ、と目を輝かせ、笑いこぼれて示すのでした。岩はそうして私の記憶に位置しました。小学校何年生の時でしたか?
(石垣りん「夏の日暮れに」より)
所在地:賀茂郡南伊豆町大瀬