
島崎藤村 文学碑「旅」
1909(明治42)年2月田山花袋ら三人との旅の紀行「伊豆の旅」の一節。花袋の「北伊豆」、蒲原有明の「豆北豆南」は同じ旅を描いたもの。四人は前夜、湯ヶ島温泉の落合楼に宿泊してこれから天城を越えようとしている。近代作家の眼を通して描かれた当地の姿として記念すべき作品群であるといえる。
碑文
茅野といふ山村の入口で吾儕(われわれ)は三人ばかりの荒くれた女に逢った。「ホウ、半鐘がありますぜ。斯様なところに旅舎も有るー是の次に来る時は是非あの旅舎で泊めて貰ふんだネ。」とA君は戯れるやうに言った。この村の出はずれに枯々とした耕地があって、向ふの方には屋根の低い小屋が見える。樵夫らしい男が通る。吾儕の馬車はそれから一層深く山の中へ入った。
所在地:伊豆市茅野 浄水場