
司馬遼太郎 六号碑
文章は「富士の白雪、朝日に融ける、融けて流れて三島にそそぐ、という、農兵節は要するに富士の地下水脈のゆたかさをことほいだ歌らしい。こんどの旅で腑に落ちた」と続いていく。三島の溶岩流と湧水の関係を正確にわかりやすく表現している。司馬遼太郎らしさのあらわれた文章である。
碑文
この湧水というのが、なんともいえずおかしみがある。昔富士が噴火してせりあがってゆくとき、溶岩流が奔って、いまの三島の市域にまできて止まり、冷えて岩盤になった。その後、岩盤が、ちょうど人体の血管のようにそのすきまに多くの水脈をつくった。融けた雪は山体に滲み入り、水脈に入り、はるかに地下をながれて、溶岩台地の最後の縁辺である三島にきて、その砂地に入ったときに顔を出して湧くのである。
所在地:三島市 桜川沿い