伊豆文学散歩
十返舎一九 四号碑

十返舎一九 四号碑

十辺舎一九は静岡市生まれの戯作者。「東海道中膝栗毛」は江戸時代空前のベストセラー。碑文は三島の宿に着いたところで、客引きをする宿場女との会話がいきいきと描かれている。

碑文

日も暮れに近づき、入り相の鐘かすかに響き、烏もねぐらに帰りがけの駄賃馬追ったて、とまりを急ぐ馬子唄のなまけたるは、布袋腹の淋しくなりたる故にやあらん。このとき、ようやく三島の宿へつくと、両側より呼びたつる女の声々……女「お泊りなさいませ、お泊まりなさいませ」弥次「エエ、ひっぱるな、ここを放したら泊まるべい」女「すんなら、サア、お泊り」弥次「あかんべい」……喜多「いい加減に、此所へ泊まるか」女「サア、お入りなせいませ、お湯をお召しなさいませ」弥次「ドレ、お先に参ろう」……と、はだかになりてかけ出す。女「モシ、そこは雪隠(せっちん)でござります。こっちへ……」弥次「ホイ、それは」と湯殿へゆく。

所在地:三島市 桜川沿い