伊豆文学散歩
神洞滝

神洞滝

安良里港に注ぐ浜川の上流にある神洞滝は、住民に「お滝さん」の愛称で親しまれている。落差約67メートルにも及ぶ滝は迫力があり、三島由紀夫の小説『獣の戯れ』にも登場している。 水量は多くはないが、柱状の溶岩でできた岩肌を緩やかにカーブを描いて滑り落ちる様子は優雅で上品さを感じさせる。

碑文

滝の眺めは壮麗だった。高さ凡そ六十メートルの黒光りする岩の頂きには、乱れた雲のかがやきがあり疎らな雑木が光を透かしている間から、水が小走りに走り出て雪崩れてくる。上方三分の一ほど白い繁吹ばかりが見えて岩肌は見えないが、落ちる水はそのあたりから二手に分かれ、俄かに見る者へ襲いかかってくるように前方へ迫り出し、十重二十重に段をなして、白い鬣を振りみだして落下する。
(三島由紀夫「獣の戯れ」より)

所在地:賀茂郡西伊豆町安良里