伊豆文学散歩
三島由紀夫 文学碑

三島由紀夫 文学碑

昭和36年発表の小説「獣の戯れ」の一節。三島は、その前年取材のため安良里を訪れ宝来屋旅館に滞在した。作中人物の心の動きと一体となった緻密な風景描写は作者ならではのものである。碑面の筆跡は三島の父平岡梓のもの。

碑文

船首の左に、黄金崎の代赫いろの裸の断崖が見えはじめた。沖天の日光が断崖の真上からなだれ落ち、こまかい起伏は光りにことごとくまぶされて、平滑な一枚の黄金の板のように見える。断崖の下の海は殊に碧い。異様な鋭い形の岩が身をすり合わせてそそり立ち、そのぐるりにふくらんで迫り上った水が、岩の角角から白い千筋の糸になって流れ落ちた。

所在地:西伊豆町 黄金崎